買収(されました)日記

ゴリラ田
ゴリラ田

さすらいのサラリーマンこと、私ゴリラ田が転職した先の会社が買収された際の日記です。

買収される予定のある方や、他人のトラブルは見ていて楽しいよね!と思う方に役立てば幸いです。

1)弊社が買収された。

転職して1年。転職先が買収された。急にである。何が変わるのか?については、上役含めて、何もわからない。分かるは社長のみである。給料があがるのか、部署は変わるのか、、、、さぁ俺の人生はどうなる。

2)買収からの小さなさざ波①

買収後、上役が「明日から何かが変わるわけではありません!」みたいな必死こいたアナウンスはあった。急に集められて、説明を聞くみたいなバタバタはあったが、確かに特に変わらない日々が続いている。社内に少しずつ知らない顔が増えた。知らない人から「○○部長って今いる?」みたいなことを聞かれることが増えた。アウトルックの予定をみろよと思うが、見る権限がまだないor見なくても良い人たちの到来なのだろう。

3)買収からの小さなさざ波②

アウトルック見ない属の人たちが、ちょこちょこ部署に訪れるようになる。直接しゃべることはないが、部長陣はつかまって、「このアクションはいくらかけて、何故したくて、いくら儲かったのか」と聞かれている。平たくいえば、昔やったことをやんわり詰められている。相互理解と言えば、そうなのだが、まぁそんな感じだった。

4)買収からの小さなさざ波③

親会社からのたいそうなブランドブックみたいな物が送られてきた。読んでみるがよくわからない。というか、ブランドブック全般そうだと思うが、満足しているのは作った人たちだけで、読んで、「はい。なるほど、理解しました」とはならんのだ。そんなことは百も承知なんだろうけど、外堀をまずはスコップで埋めに来ました感がある。

5)役員たちの前哨戦①

他部署である商品部から、カチコミがあった。商品の売り方に、営業部へ物を申したいとのことで、ノーアポで突っ込んできた。「余計なお世話じゃ!すっこんでろ!」といえるような売り上げ状況では確かにないので、課長様と一緒にひとまず聞いてみると、なんというか、ただの空想の類である。「そんな言うなら自分でやったら?」という趣旨の言葉を大変お上品にお伝えしたところ、「お前らがやるんだろ!」と強い語気で返されたので、「まぁ偉い人に聞いてみますわ」といったん持ち帰った。なんじゃあれ。

6)役員たちの前哨戦②

我らが営業部の役員様は、カチコミを裏で見ていたらしい。「いや、早く出て来て、一緒に戦って欲しかったよ」とは言えないので、かくかくしかじかと伝えた。「商品部に言われた通りやれ」とのこと。嘘だろ。

7)役員たちの前哨戦③

事情通の我らが課長様に聞くと、これは前哨戦なのだそうだ。互いの部署の悪いところを擦りあい、役員様どうしが良い評価をもらえるようにやりあっていると。で、我らが営業部役員様は、商品部側に何かやりかえしてくれているのかと聞くと、何もしていないと。

我らが営業部役員様は、試合を放棄している。生き残るアクションを打つのではなく、逃げの一手、つまるところ【転職】を模索しているような。まぁ元々勝負ところで逃げる人だったから、仕方ないか。

8)役員たちの前哨戦④

商品部様のオーダーは、もはや空想を超えていた。商品部の言い分は、同じ売り方をしていても、売り上げは変わっていかない。むしろジリ貧である。売り方を変えねばならない!ということだった。これは筋が通っているし、正直に言えば耳が痛い話だった。

ただ、商品部様は何を提案しても、違う違う、あんなだ、こんなだと理想を語られる。言っている「あんなもの」と「こんなもの」は、ルイヴィトンと西松屋くらいの距離がある。実際、ルイヴィトンのブランディングの話の後に、西松屋パトロールの話が出たりと、もはや魔合体のようなことを言っている。あくまで例だとはわかっちゃいるが、想像ができない。

「海底2万マイル」の作者ジュール・ヴェルヌは言った。「人が想像できるものは必ず実現できる」。裏を返せば、想像すらできないものは実現はできない。帰ってくれ。

9)役員たちの前哨戦⑤

あまりに商品部様のオーダーが無茶苦茶であったので、10人で始まった(始めさせられた)「販売手法を変えよう」プロジェクトは、8人がメンタルへルスになった。「可哀そうに」と思う一方で、8人分の仕事がのしかかってきた。俺ともう一人こそが、真に可哀そうではないか。

「何故、そもそも商品部に営業部が販売方法を承認頂かないとといけないのか?指示系統めちゃくちゃじゃないか?お前の上司たちは何をやっているのか?」と思われた方は、まさしくその通りで、めちゃくちゃなのである。我らが営業部役員様はそしらぬ顔をしている。

10)役員たちの前哨戦⑥

さすがに8人も没せしめたプロジェクトを野放しにしていると後ろからぶっ刺されそうと思ったのか、我らが営業部役員様も同じようなプロジェクトを立ち上げた。というか、完全に同じだった。かぶせにいったのだ。

加えて言えば、営業部側のプロジェクトにも私が参画させられている。やっていることは、まったく一緒の業務が2ラインできた。中身は一緒で、外箱だけがちがう。普通に考えれば「超★無★駄★」な感じになっているが、これがサラリーマン武道なのである。

11)役員たちの前哨戦⑦

商品部役員様の当て擦りから生じた「販売手法検討プロジェクト」は、商品部主導と営業部主導でしばらく並走したが、さすがに指示系統を無視した商品部側の言い分には大義名分がなく、商品部が引き下がることで幕は降りた。

商品部が降りた形にはなったが、結果だけ見れば、商品部が販売手法に物をを申して、営業部がそれに従って検討を始めたという構図になるので、シンプルに営業部の負けである。

12)役員たちの前哨戦:エピローグ

「販売手法検討プロジェクト!」など、親会社様から聞けば些末な話である。そこで、どっちの話が通ったか否かなど、買われた企業側での小さな内紛に過ぎない。じゃあ、何のための前哨戦だったのか?と思うと、商品部役員様はどうも現社長にいい顔をしたいみたいなのである。

事情通の課長様の話はこうだ。買収された側の社長様は、親会社様になるべく権限も含めて残してもらいたい。だから、首がつながっている内に、いろんなことを改善しておきたい。

半年前くらいから、バカみたいに小さな話ですら、社長の耳にいれなければいけないルールになった(らしい)。この時点くらいから、独裁政治色が強まった社内空気になっていた(らしい)。その時点で、なんかきな臭かった(らしい)。うん、全然知らなかったな。

ともかく、そんな感じでせっせと社内をきれいにしようとしている社長様と、そのお供のお犬様として商品部役員様が一緒にワンワンしてきたというのがことの経緯のようだ。

吠えられて、噛みつかれた現場の人間としては、「マジでたまったもんじゃねーわ」と思ったが、構図としては当事者なりによく理解できた。

普通に考えたら、くだらない内紛云々より、親会社側の責任者にすり寄っていった方が良いのでは?と思う。ただ、そんなことは、きっとすでに多大に行われており、命短き(はずの)社長にも一応ベットしておくし、別に損しないし、という犬なりの判断なのかなと。

13)同化政策

内紛の火の粉も鎮火しきらないうちに、実働にも徐々に子会社化の影響が出始めた。投資についてだ。企業たるもの、常にコストが発生し、それを上回る売上げを稼ぐことで、利益を得るものである。で、そのコスト。つまり投資について、親会社と子会社側でだいぶ考え方が違うぞということが判明したのである。

だいぶ平たく書くと、我々子会社側が投資に対して結構「えいや~っ!なんとかなるっしょ~!」と決めていたのが、親会社から「そりゃ駄目だよ」と言われたのである。そりゃそうである。俺も転職してきて、あまりにいい加減な投資計画で驚いたもん。

親会社様は、投資に対してだいぶ緻密に計算をして、それを論理的に表に裏に説明し、レイヤーを重ねた承認を得て、やっとこさ稟議が降りる仕組みなのである。「よっ!大企業!」という感じである。

ここで、子会社側の親分たちは「親会社との考え方の擦り合わせが必要だよね」なんて呑気なことを言っているが、待っているのは【同化政策】で、【擦り合わせ】ではない。立場としては、敗戦国のそれと同じである。それは誰しもが分かっているのに、親分たちはそういう言い方しかできないのが、妙に空々しく、みじめでもあった。

14)言っても、仕事は進む

買収されたから、御社が落ち着くまでちょっと待ってますよ~なんて取引先に言われることはなく、計画をしていた仕事は進んでいく。同時に、買収に合わせて、親会社様へアジャストしていかなければならない。

大分まとまりかけていた商談に社内ストップがかかった。親会社様の承認フローに全然則っていないというのだ。え。

とは言っても、元々ギリギリ行動の多い弊社である。超絶サラリーマン技巧にて、社内を騙し・社外をなだめすかし、軽業のように納期をスライドさせていった俺からしたら、真っ青な状況である。

差し迫った納期・擦りあわない稟議、さぁどうするサラリーマン俺。

さて、ここまで書いて、今に至る。会社がばれてしまうので、何となくぼかして書いたが、買収されたよの話から、だいたいここまで5か月くらいの話になる。

今思えば、買収された翌日に役員の言い放った「明日から何かが変わるわけではありません!」というのは、「少なくとも【明日】は何も起きません。でも【明後日】は分かりません」くらいな感じだったんだなと思う。

15)戦略的に生きていく

さて、出世の目は完全につぶれた。親会社からはしっかりお目付け役が投下されるだろうし、転職者はプロパーの2の次の扱いになろう。というか、プロパーだって急に傍流にいくわけだろ。あくまで自分は技術職採用なので、お役御免ということにはなるまいが、権限を持つ立場になるのは難しいだろう。

では、打つ手がないかというとそうでもない。逆に、大きな会社の傘下になることで、給与面や福利厚生面での向上もあるかもしれない。これはあるなしが判明したら判断すればよいので待てば良い。

16)思ったよりも早い落下傘

現社長様の退任が突如決まり、早々に新社長が着任されることが決まった。突如のレベルで言うと、1週間で発表から交代まで行われる次第だ。すごい。この交代劇には社内もさすがに驚いた。

ただ、現社長の退任メッセージで、社長自身も驚いていたことが分かった。買収当初は、大きく伸ばしていきたい事業を親会社様・既存事業は現体制ということを親会社様とは話していたよう。ただ、進めていく中で、コロッと社長交代を親会社様より辞された模様。詳細はわからないけど、現社長自身としてはサプライズだったのは何となく分かった。

ともかくなんというか、「そっちの都合は知らないけど、強烈に変えていくのでよろしくね!」というメッセージ感はあった。買収1発目の人事が、一番でかいものだった。

17)そこから変えるか~な決定

社長様の退任と並行して、自社サイトもいろいろと更新が行われている。笑ってしまったというのは不謹慎だが、「そこ大事か?!」と突っ込みたくなるような改変があった。

まず、役員陣の写真表示がなくなるとのことだ。文字表記のみになる。新役員を改めて撮影したりするのが面倒なのか…?ともかく役員さん顔出しNGですわ。

創業者メッセージは、縮小します。神のごとくあがめられていた創業者。その人のメッセージなんて普通に考えたら、どうでも良い気もするけど、「新神様は俺達やで」ということなのか。とにかく意図なくやる訳ではないはずなので、まぁなんというか、同化政策の一環か。

同化政策は続く。本社は移転しないで欲しいな。家買っちゃったしな。

18)いざ来る子会社初日

買収。投資承認フローの複雑化。社長交代による、上申フローの難度UPと、しっちゃかめっちゃかな毎日を過ごしている。

「皆さま、世の中において平穏に生きたくば、買収はそう簡単になさらない方が良さそうですよ。」と、声を大きくして伝えたい。

ここまで買収買収と書いたが、買収されて正式に傘下になるまで少しリードタイムがあった。その短い期間でこれだけいろんなことが起きた。まだ正式に子会社化したわけではないのに、この前兆である。

正式に子会社となった際はどうだったのか。偉いことの連続である。まず、名前の呼び方が変わった。社内でメールを送る際は、「~~さん、お疲れ様です」と書き出していたものが、「~~殿 お疲れ様です」となった。どの…ってwww

ど~でもいい~!!!と思うかもしれないし、実際「どっちでもよくない?」と思った社内の人間は私含め多かったが、不思議なもので、翌々日くらいから、メールから「~~さん」が消えた。おおお同化政策。

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